月別アーカイブ: 12月 2018

年末年始営業のお知らせ

2018年の営業は12月27日(木)をもちまして終了いたしました。
2019年は1月7日(月)より営業を開始いたします。

弁護人が取調べに立ち会う権利について

先日、「EU諸国における取調べの可視化と弁護人の立会い」というセミナーに参加してきました。

取調べへの弁護人の立ち合いについては、最近、日産のカルロス・ゴーン氏が逮捕された事件に関連して、フランスの新聞社などが日本でこれが認められていないことを批判する報道をしたことから話題になっていました。

 

日本では、逮捕・勾留されている場合はもちろん、そうではない、いわゆる在宅事件の場合でも弁護人が取調べに立ち会うことはできません。これは法律で禁止されているということではなく、警察・検察が絶対に応じないということです。

 

これに対し、EU加盟国では、国ごとに具体的な仕組みは異なっていますが、EU指令により弁護人の取調べ立会いに関する法律が整備されています。もう少し詳しく説明すると、EU指令が直接定めているのは弁護人の援助を受ける権利を保障する法整備なのですが、先行する欧州人権裁判所の判例により、弁護士の援助を受ける権利には弁護人が取調べに立ち会う権利が含まれると解釈されており、その結果としてEU各国で弁護人が取調べに立ち会う権利が認められるようになったということです。なお、同様の権利はアメリカや、お隣韓国、台湾でも認められています。

 

日本でも憲法上の権利として弁護人の援助を受ける権利や黙秘権を保障していますが、これまで判例上弁護人が取調べに立ち会う権利が認められたことはありません。弁護士会としても日本政府に繰り返し立法を求めていますが、今のところ実現するに至っていません。

今の日本の刑事司法の仕組みでは、被疑者を逮捕から20日間以上も拘束することができ、その間ずっと取調べを行うことができます。被疑者には黙秘権が認められていますが、取調べを受けること自体を拒否することはできず、取調べには一人で臨まなければなりません。これで黙秘権を含む被疑者の権利が十分に保障されていると言えるのでしょうか。

 

ゴーン氏の事件はこのような日本の現状が世界の批判にさらされたという意味で良い機会であったと思います。しかし、現在のところ立法により被疑者に弁護人の取調立会権が実現する見込みはないと言わざるを得ません。EUにおいてもそうだったように、こういうときこそ少数者の権利を守る裁判所の出番だと思います。裁判所が一言、憲法上被疑者には弁護人を取調べに立ち会わせる権利が認められる、と判断してくれれば良いのです。これまでの最高裁判所を見るにあまり期待はできませんが、刑事弁護に携わる弁護士として、今後も取調べに対する弁護人立会権実現に向けた活動を続けていきたいと思います。

 

弁護士 船戸 暖

ゴーン氏の収容先について

ゴーン氏が逮捕・勾留されていることは大きなニュースになっています。

ここでは、逮捕された彼が東京拘置所に収容されていることについて、少しだけ触れたいと思います。

 

現在の日本では、一般的に逮捕された場合は警察署に収容されています。そのような扱いから考えると、例外的な扱いをしているように思われるかもしれません。

でも、外国に目を向けた場合、むしろこの日本の扱いこそ、例外的です。

 

「代用監獄」という言葉があります。

 

逮捕・勾留されている間、捜査官による取り調べが実施されます。警察に収容するということは、取り調べをする側の手元に収容するということを意味します。

いわば「取り調べ放題」ということになってしまいます。

 

これはいかにもおかしいのではないか。

さらに言えば、逮捕・勾留という制度自体、取り調べのための制度ではありません。

それなのに警察署に収容するということはおかしなことであると言わなければなりません。

 

興味を持たれた方は、東京弁護士会のホームページにわかりやすいまとめがありますので、そちらもご覧ください。

代用監獄Q&A

https://www.toben.or.jp/know/iinkai/keiji/qa/

 

弁護士 髙橋 俊彦

吉澤ひとみさんの執行猶予判決について思うこと

先日、元モーニング娘。の吉澤ひとみさんに対する事件の判決が下されました。

懲役2年、執行猶予5年ということです。

この事件の弁護人は私や当事務所の弁護士が担当していません。ですからあくまでも外野として思うところを書きます。

 

ニュースについているコメント欄を読みますと、「軽すぎるのでは?」という声が多いようです。

法律家としては、そういう声に対して真摯に受け止める必要があると思う一方で、「果たしてそうかな?」ということも思ったりします。

 

懲役2年というのは、刑務所に入って懲役刑を2年間務めなければならないという刑罰です。それの執行を猶予するという判決です。つまり執行猶予というのは、定められた期間内に(今回では5年)、また犯罪を犯すようなことがなければ刑務所にいかなくて済むけれども、また犯してしまった場合には、執行猶予は取り消される場合があり、そのときには取り消しの原因となった犯罪について言い渡される刑に加えて、今回の執行猶予分(つまり懲役2年)についても服役をしなければならなくなるという制度です。

執行猶予というのは、何年間猶予するのか、という猶予期間を定めなければなりません。裏を返せば、「また犯罪を犯したら取り消されるかも?」という思いを抱きながら生活しなければならない期間、ということになります。その意味では、猶予期間が長ければ長いほど、重い判決であるという見方になります。

そして法律では最長期間として5年とされています。

つまり、吉澤さんに対する判決は、執行猶予にされる場合にはもっとも重い部類であると、裁判所が考えたということになります。

 

刑罰はどのように考えて決めるのか、というテーマであらためてコラムを書きたいと思っていますので、詳しくはそこに譲りますが、執行猶予にするかどうか、をどう考えるかについて少し書いてみます。

 

刑罰はそもそも「報い」としての側面(応報)と、二度と犯さないための更生(教育)という側面があると言われています。

ですから、執行猶予にするかどうかについても、この両面から考えていくことになります。

 

まさに不幸中の幸いですが、吉澤さんの事件では被害者の方の傷害は重篤なものではなかったようです。亡くなってしまっていた場合に比べて、その報いは重く評価されるべきではないでしょう。

ですから、刑務所に送るほどの報いを与えるまでは必要がないのではないか?という考えが働きます。

 

でも、どうやら飲酒運転をしていたようです。そうであれば、過失による事故であったとしても、その過失は重たいものであると評価されるでしょう。この点は、報いとして重いものを与えるべきではないかという方向で考えられるでしょう。芸能界を引退したということは、社会的に大きな報いを受けたということがいえると考えます。そうであれば、さらに刑罰によって与えるべき報いも多少軽くしてもよい、そう考えることもあるでしょう。

 

では、教育という面ではどうでしょうか。本人がこの事件についてどう思っているのか、ということが重要です。教育を受ける側のレベルがどの程度かによって、教育の内容も変わってくることは普通の教育と変わりがありません。

 

また、周りの環境はどうでしょうか。所属していた芸能事務所の社長が嘆願書のようなものを提出したという報道がありました。そういう再出発に向けた支えがあるかどうか、それも重要なポイントです。

 

 

冒頭にお断りしたとおり、私や当事務所の弁護士は弁護人ではありません。したがって事件の詳しい情報はありません。ただ、報道されている限り、弁護人としては、そのようなことをきちんと法廷に出して裁判所の評価を受けたのではないでしょうか。

 

刑事事件の弁護人の業務は、決して法廷の中だけに限るものではありません。

依頼者である被告人が、どうしたら再出発ができるだろうか、二度と罪を犯さないためにどうしたらよいのだろうか、ということを考え、かつ道筋をつけていくことも重要な仕事です。

もちろん、この観点は「実際に罪を犯してしまった場合」についてであることは当然です。罪を犯していないにも関わらず、被告人とされてしまった場合(えん罪事件)とは違います。

 

我々、立川フォートレス法律事務所の弁護士は皆、このような刑事事件に情熱を傾けてきましたし、今後もそのつもりです。

 

どうぞお気軽にご相談いただければと思います。

 

弁護士 髙橋 俊彦