DNA型鑑定体験記

 5月9日(土)、鑑定科学技術センターにて、DNA型鑑定の実習を行ってきたので、その体験を報告します。

 

1 鑑定科学技術センターについて

 鑑定科学技術センター(http://www.kantei-bunseki.jp/#1)は、一般財団法人材料科学技術振興財団(MST)が2010年に新設した新事業です。同財団は、科学技術分野における新材料の研究等を行う、科学技術分野のエキスパートですが、その財団が、DNA型鑑定、薬物・毒物分析、指紋鑑定、筆跡鑑定等、市民生活により近い分野での研究評価技術の利用を目的の一つとして設立したセンターです。実際に、弁護士等からの依頼を受けて、さまざまな鑑定を実施し、事件の解決に貢献した事例もあるそうです。

 

2 DNA型鑑定とは

 さて、DNA型鑑定は、近年目覚ましい発展を遂げて、一般市民にも知られた技術になってきたと思います。刑事事件はもちろんのこと、親子鑑定など民事事件の分野でもDNA型鑑定が活躍しています。刑事事件についていえば、足利事件、東電OL事件、袴田事件など、最近話題となった再審事件で、DNA型鑑定が再審開始の決め手になったことは、記憶に新しいところです。

 私自身も、刑事事件を担当していて、DNA型鑑定に接する機会は多いです。しかし、DNA型鑑定とは、どのような作業をしているのか、どのようなメカニズムでDNA型が特定されるのか、実はよくわからない部分が多いことも事実です。以前、『Q&A 見てわかるDNA型鑑定』(現代人文社・2010年)という本の付録DVD作成に関わった際、DNA型鑑定の実習を見学させていただきました。ただ、自分自身の手でDNA型鑑定をやってみるという経験はなかったので、今回実習に参加できて、非常によい経験になりました。

 

3 実習

 実習は、私を含め6名で参加しました。担当していただいたのは、日本大学名誉教授の押田茂實先生と、お二人のセンタースタッフの方です。今回は、各自の血液を鑑定することにしました。まず、簡単な講義を受けて、それぞれの血液を採取し、いざ作業開始です。

 DNA型鑑定は、クリーンルーム内で行います。白衣を着て、帽子で髪を覆い、マスク・手袋を着用して入室します。DNA抽出作業の前に、ピペットの使い方を習いました。ピペットは、○○㎕というごく少量の液体を正確に吸い込むことができる道具ですが、この使い方をマスターすることが、鑑定に必須の技術です。

 そして、自分の血液からDNAを抽出する作業を実施しました。スタッフの指導を受けながら、手順に従って行いましたが、少しでも間違えるとうまくDNAが採れない、非常に繊細な作業でした。

 次に、DNAの定量作業を行いました。この後のPCR増幅をするのに、適度な量というのが決まっているので、その範囲に収まるようにDNA量を希釈する作業です。

 続いて、PCR増幅です。PCRとは、Polymerase Chain Reactionの略で、この技術を用いると、特定の増やしたい領域のDNAを増幅することができます。この技術が開発されたことで、DNA型鑑定が目覚ましい発展を遂げることとなりました。PCR増幅は、専用の機械を用いて、しばらく時間がかかります。その間、昼食休憩を取りました。

 PCR増幅が完了すると、シーケンサーという装置を使って、DNA型を解析し、判定します。解析が完了するまでしばらく休憩を経て、結果発表です。

 今回参加した6名とも、無事、DNA型鑑定に成功しました。スタッフの方が丁寧に指導してくれたおかげです。今回判明した私のDNA型は・・・秘密にしておきます。

 

4 実習を経て

 この度、初めてDNA型鑑定を体験することができて、非常に繊細な作業なのだということを改めて感じました。DNA型鑑定は機械的になされるものと思っている方もいるかもしれませんが、現実はそう甘くはありません。特にDNAの抽出作業には高い技術力が要求されます。今回は、直接採取した血液ですので、DNAが抽出しやすく、我々でもなんとか太刀打ちできました。しかし、事件現場に残された血痕や体液斑などでは到底うまくはいかないでしょう。技術が進歩した現在でもなお、鑑定人個人の高い技術力が要求されるのだということが実感できました。

 また、実習を経験して、DNA型鑑定の流れを具体的にイメージすることができました。刑事事件でDNA型鑑定を争う場合にも、実際に何をしているのかわからなければ、鑑定人に何を聞いたらいいのかもわかりません。今回の実習では、今後の弁護人活動においても非常に有意義な情報を得ることができました。改めて、押田教授とスタッフの皆様に感謝申し上げたいと思います。

 

(文責: 弁護士 贄田 健二郎)