捜査機関(通常は警察・検察がこれに当たります。)の捜査の進め方としては、被疑者(ニュースや新聞などでは「容疑者」と呼ばれたりもします。)を逮捕して捜査を行う場合と被疑者を逮捕せず捜査を行う場合があります。
ですから、被疑者とされたからといって、必ず逮捕されるわけではありません。
例えば「平成24年版犯罪白書」の数字を見ると、逮捕されている被疑者は全体の約3分の1程度ですから、残りの3分の2近くの被疑者については逮捕されないまま捜査が進められていることになります。
では、逮捕されていなければ弁護士に依頼する必要はないのでしょうか。まず、逮捕されていなくても、被疑者となれば捜査機関から出頭を求められ、取調べを受けることはあります。これを「任意の取調べ」などと呼ぶことがあります。
この取調べでは、取調官(刑事や検事)が被疑者の話をまとめた供述調書と呼ばれる書類を作成したり、被疑者自身が自筆の書類を作成させられることがあります。
そして、これらの書類は、起訴・不起訴の判断材料になるのはもちろんのこと、起訴された後の裁判で証拠とされることがあります。
しかも、このときに作成された書類が思い掛けず裁判で不利な証拠になってしまうことがあります。
そして、「自分はそのようなつもりで言ったのではない」とか「自分の話した内容と違うのではないかと刑事に言ったら、同じ意味だからと言われたので、そういうものかと思ってサインした」などと裁判で主張をしても、もはや手遅れであることも少なくありません。
ですから、被疑者とされた段階で速やかに弁護人を選任して、適切なアドバイスを受けながら取調べに臨むことがとても重要です。
さらに言うと、当初は被疑者ではなく「参考人」という立場で事情聴取を受けていたが、ある時突然、被疑者とされることも少なくありません。
そのような場合にも、早期の段階で、弁護士に相談をして、アドバイスを受けることをお勧めします。
任意の取調べを受けている際、取調官から、「こんな事件で弁護士を付ける必要はない」とか「弁護士なんか付けたらかえってお前のためにならないぞ」などと言われることがあるかも知れません。
しかし、弁護人の必要性が全くない事件はありません。
そもそも、取調官がそのような発言をすること自体、被疑者の弁護人選任権を侵害するものであり、決して許されるものではありません。
もしこのような違法・不当な発言が取調官によってなされた場合、弁護人は捜査機関に対して直ちに抗議をし、被疑者の権利・利益を守ります。
逮捕されていなくても、弁護人は必要です。少しでも不安や疑問を感じたら、まずは弁護士に相談することをお勧めします。