弁護士になり、今年3月頃から、単独で刑事事件の国選や当番を引き受けられるようになりました。
さっそく、6月末頃に、勾留に対する準抗告が2件連続で認容されるということがありましたので、ご報告したいと思います。
そもそも勾留とは、被疑者を逮捕したとしても最大72時間までしか捕まえておくことができないので、それを超えて身体を拘束しておく必要がある場合に裁判所の許可によって認められるものです。
これが認められると、まず10日間身体拘束が続けられることになり、さらに10日間まで延長ができるので、長い期間拘束されることになってしまいます。
勾留に対する準抗告とは、この裁判所の勾留決定に対する異議の申立のことをいいます。
勾留が認められる根拠は、主として、被疑者が証拠を隠す(人の証言を変えさせたり、有利な証拠を作り出すことも含みます)、又は逃げてしまうおそれがあるのを捕まえておくことで防止するということにあるので、準抗告ではこれらの事情がないことや勾留されると不利益が大きいことなどを主張していくことになります。
1件目は酒気帯び運転の事案でした。
当番弁護士(逮捕された時から誰でも1回は無料で呼ぶことができます)として出動したところ、既に逮捕の段階を過ぎて勾留されていたというものでした。
本人には家族や仕事があり、前科もなく、特に事実を争っているということもないので、勾留することはないのではないかという印象でした。
当日のうちにご家族の方と会うことができたので、身元引受人となることや家族・仕事の状況を記載した陳述書を作成し、本人の誓約書等も加えて翌日に準抗告を申立てたところ、認容されて無事釈放となりました。
確かに証拠隠滅として当日の飲酒量をごまかすために同乗者や店員に働きかけることなどが考えられるので、勾留の理由がないとはいえませんが、勾留がされてしまった最大の理由は、弁護士が就いていなかったために勾留をしない方向に働く本人にとって有利な事実が出ていなかったことにあると思います。
検察官も基本的には処罰をしようとする側の立場ですので、本人に有利な事情を積極的に探すことはしません。
この事案は、逮捕段階で弁護士が就いて適切な弁護活動をしていれば勾留されること自体を阻止することは十分可能であったと思いますので、やはりどんな事件でも弁護士の援助は必要であると感じたとともに、逮捕されたらまず一度は弁護士を呼んで相談をしてほしいと強く思いました。
2件目のご報告はまた近いうちにさせていただきます。
勾留をされることになると、逮捕と合わせて最大で23日間も身体拘束を受けることになります。23日間も捕まってしまえば、会社に勤めていればクビになってしまうことも多いと思います。逮捕・勾留それ自体は刑罰ではないので、いくら罪を犯した(かもしれない)としても、勾留をすることには慎重であるべきであり、今の裁判所の傾向には非常に疑問を持っています。
私が刑事弁護人として特に力を入れていきたいことの一つが身体拘束からの解放ですので、これからも頑張っていきたいと思います。
弁護士 船戸 暖