本年獲得した、勾留に対する準抗告の2件目について、ご報告です。
店でのトラブルで店員に暴行して怪我をさせたという傷害事件で、本人は一切暴行など働いていないと否認している事案でした。1件目と同様、本人には家族と仕事があり、前科もないという事案です。
裁判官(所)の判断では、勾留を決定した理由として当然のように本人には証拠隠滅や逃亡をするおそれがあると認定されており、準抗告を認める決定文の中でもそのおそれがあることは否定されていませんでした。
前提として、この判断自体、私は非常に疑問に思っています。まず、逃げるかもしれないということですが、そもそも逃げるという行動はかなり勇気のいることだと思いますので、刑務所に入るような事件ではない場合に、家族や仕事があって安定した生活をしている人がそれを捨てて逃げるということは通常考えられないと思います。
また、証拠を隠すかもしれないということについても、今回も含め多くの場合一番問題になるのは被害者などの証人となる人に働きかけて証言を変えさせるおそれがあることですが、本人の釈放後に証人が証言を変えれば本人が働きかけをしたことはすぐバレてしまう(しかも証人を脅したりすればそれ自体が罪になる)ことだと思いますので、事実を認めているか否かかわらず、何か特別な事情がない限りはそのようなおそれはないものと考えるべきではないかと思います。
しかし、裁判官(所)は一般的にそのような考えは持っておらず、割と簡単に証拠隠滅や逃亡のおそれを認めるてしまっている印象があります。
2件目の事案は、刑務所に入るほどではないにせよ疑われている事実はそれなりに危険な暴行態様であったこと、本人が事実を否認している(裁判所はこれを証拠隠滅を疑わせる事情と考える傾向にあります)ことから準抗告が認められるかどうか不安がある事件でした。
しかしながら、1件目と同様に家族の協力を得て陳述書などを作るとともに、上記のような私の考えを詳しく論述したところ、なんとか準抗告を認める決定を得ることができ、私が弁護士として就いた翌日には釈放してもらえることになりました。
弁護人がいなければ、身体拘束が争われることはなく、当然に勾留が続いたことでしょう。弁護人は、準抗告以外でも、検察官の勾留請求や、裁判所の勾留決定に際して意見を述べたり、起訴後の保釈請求などで身体解放を目指す弁護活動をしています。身体不拘束が当然であるという時代を目指して、これからも頑張ります!
弁護士 船戸 暖