コラム

吉澤ひとみさんの執行猶予判決について思うこと

2018年 12月3日

先日、元モーニング娘。の吉澤ひとみさんに対する事件の判決が下されました。

懲役2年、執行猶予5年ということです。

この事件の弁護人は私や当事務所の弁護士が担当していません。ですからあくまでも外野として思うところを書きます。

 

ニュースについているコメント欄を読みますと、「軽すぎるのでは?」という声が多いようです。

法律家としては、そういう声に対して真摯に受け止める必要があると思う一方で、「果たしてそうかな?」ということも思ったりします。

 

懲役2年というのは、刑務所に入って懲役刑を2年間務めなければならないという刑罰です。それの執行を猶予するという判決です。つまり執行猶予というのは、定められた期間内に(今回では5年)、また犯罪を犯すようなことがなければ刑務所にいかなくて済むけれども、また犯してしまった場合には、執行猶予は取り消される場合があり、そのときには取り消しの原因となった犯罪について言い渡される刑に加えて、今回の執行猶予分(つまり懲役2年)についても服役をしなければならなくなるという制度です。

執行猶予というのは、何年間猶予するのか、という猶予期間を定めなければなりません。裏を返せば、「また犯罪を犯したら取り消されるかも?」という思いを抱きながら生活しなければならない期間、ということになります。その意味では、猶予期間が長ければ長いほど、重い判決であるという見方になります。

そして法律では最長期間として5年とされています。

つまり、吉澤さんに対する判決は、執行猶予にされる場合にはもっとも重い部類であると、裁判所が考えたということになります。

 

刑罰はどのように考えて決めるのか、というテーマであらためてコラムを書きたいと思っていますので、詳しくはそこに譲りますが、執行猶予にするかどうか、をどう考えるかについて少し書いてみます。

 

刑罰はそもそも「報い」としての側面(応報)と、二度と犯さないための更生(教育)という側面があると言われています。

ですから、執行猶予にするかどうかについても、この両面から考えていくことになります。

 

まさに不幸中の幸いですが、吉澤さんの事件では被害者の方の傷害は重篤なものではなかったようです。亡くなってしまっていた場合に比べて、その報いは重く評価されるべきではないでしょう。

ですから、刑務所に送るほどの報いを与えるまでは必要がないのではないか?という考えが働きます。

 

でも、どうやら飲酒運転をしていたようです。そうであれば、過失による事故であったとしても、その過失は重たいものであると評価されるでしょう。この点は、報いとして重いものを与えるべきではないかという方向で考えられるでしょう。芸能界を引退したということは、社会的に大きな報いを受けたということがいえると考えます。そうであれば、さらに刑罰によって与えるべき報いも多少軽くしてもよい、そう考えることもあるでしょう。

 

では、教育という面ではどうでしょうか。本人がこの事件についてどう思っているのか、ということが重要です。教育を受ける側のレベルがどの程度かによって、教育の内容も変わってくることは普通の教育と変わりがありません。

 

また、周りの環境はどうでしょうか。所属していた芸能事務所の社長が嘆願書のようなものを提出したという報道がありました。そういう再出発に向けた支えがあるかどうか、それも重要なポイントです。

 

 

冒頭にお断りしたとおり、私や当事務所の弁護士は弁護人ではありません。したがって事件の詳しい情報はありません。ただ、報道されている限り、弁護人としては、そのようなことをきちんと法廷に出して裁判所の評価を受けたのではないでしょうか。

 

刑事事件の弁護人の業務は、決して法廷の中だけに限るものではありません。

依頼者である被告人が、どうしたら再出発ができるだろうか、二度と罪を犯さないためにどうしたらよいのだろうか、ということを考え、かつ道筋をつけていくことも重要な仕事です。

もちろん、この観点は「実際に罪を犯してしまった場合」についてであることは当然です。罪を犯していないにも関わらず、被告人とされてしまった場合(えん罪事件)とは違います。

 

我々、立川フォートレス法律事務所の弁護士は皆、このような刑事事件に情熱を傾けてきましたし、今後もそのつもりです。

 

どうぞお気軽にご相談いただければと思います。

 

弁護士 髙橋 俊彦

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