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布川事件国家賠償請求訴訟判決を傍聴して

担当:贄田

 

2019年5月27日午後4時、東京地方裁判所103号法廷で、布川事件の国家賠償請求訴訟の判決が言い渡されました。判決言渡しを傍聴してきましたので、内容を報告するとともに、若干の感想を述べたいと思います。


布川事件とは、1967年に茨城県で起きた強盗殺人事件です。桜井昌司さんと杉山卓男さん(2015年に死去)が逮捕されました。2人は捜査段階で殺害を自白しましたが、公判では否認し、争いました。しかし、1978年に最高裁で無期懲役の判決が確定しました。

 1996年に仮釈放され、2人は無実であると主張し、再審請求をしました。その結果、2009年に再審開始が決定し、2011年、再審で無罪が確定しました。それを受けて、桜井さんが国と茨城県に対し、約1億9000万円の国家賠償を求めて訴訟を提起しました。その判決が言い渡されました。


 判決は、「被告らは、原告に対し、連帯して金7600万8757円を支払え。」というものです。桜井さんの勝訴です。相当額の逸失利益の賠償も認められ、桜井さんとしては完全勝利に近い結果だったと思います。

 判決では、捜査段階で警察官が、「母親が早く自白するよう言っている」「目撃した人物がいる」などと、虚偽の事実を述べて自白を強要したことについて、偽計を用いた取調べで違法であるとしました。また、公判廷で警察官が、存在する証拠を存在しないと虚偽の証言をしたことや、検察官も繰り返しあるはずの証拠が存在しないと発言していたことについても、違法であると認定しました。

 他にも、国や県の違法性が認定され、国家賠償請求が認められました。これまで、刑事裁判や再審で無罪になる例は少なからずありましたが、国や公共団体の違法性が認定され国家賠償が認められた例はほとんどありませんでした。詳細は割愛しますが、ただ無罪になっただけでは賠償は認められず、法的に高いハードルが課されていることが原因です。そのような中で、警察官、検察官の違法行為をきちんと認定し、国家賠償を認めた今回の判決は、高く評価されるべきだと思います。


判決の中で、法的に興味深い判断をしていた部分について、若干コメントしたいと思います。なお、言渡しでは判決の要旨が述べられただけですので、実際の判決と少し齟齬があるかもしれません。その点はご容赦ください。

 1点目は、刑事裁判における検察官の証拠開示義務を認めた点です。刑事訴訟法には、これまで、検察官が被告人あるいは弁護人に対して証拠を開示する義務を定めた条文はありませんでした。検察官が請求した証拠を閲覧することはもちろんできますが、それ以外の証拠を被告人や弁護人は見ることができませんでした。裁判所が厳格な要件のもとに証拠開示命令を発することができる、という判例はありましたが、ほとんどのケースでは、被告人や弁護人がいくら請求したとしても、検察官が「存在しない」「出さない」と言う限り開示されませんでした。2005年の刑事訴訟法改正で、公判前整理手続の規定が新設され、一定の要件のもとに証拠を開示する制度ができましたが、布川事件はもちろん同制度ができる前の事件です。

 裁判所は今回、刑事裁判の結果に影響を及ぼす可能性が明白である証拠については、有罪方向、無罪方向を問わず、検察官は公判廷に顕出すべき義務を負う、つまり証拠開示義務を負う、と判断しました。また、結果に影響を及ぼす可能性が明白とまではいえない証拠であっても、弁護人が具体的に証拠を特定して請求した時は、刑事裁判の結果に影響を及ぼす証拠を開示する義務を負う、とも判断しました。

その法的根拠として、刑事訴訟法1条と検察庁法4条を挙げました。刑事訴訟法1条は、刑事裁判は真相解明を目的とすると定めた条文です。検察庁法4条は、検察官は公益の代表者として職務を行うと定めた条文です。検察官は、被告人を有罪にすることが仕事なのではありません。被告人が無罪であることを示す証拠があるならば、それを公判廷に顕出し、裁判所の公正な判断にゆだねるべきです。それが公益の代表者としての務めであり、真相解明を旨とする刑事裁判の目的にも資するといえます。裁判所は、このような考えから、検察官の証拠開示義務を認めたものと思われます。

この判断は画期的です。裁判所は上記判断をもとに、布川事件で検察官が証拠を開示しなかったことは違法と結論付けました。偽証までして証拠を隠し続け、再審に至ってはじめて出してきた警察・検察のやり方が違法だときっぱり判断したことは、裁判所に敬意を表したいと思います。

2点目は、除斥期間の判断です。被告らは、本件では、不法行為による損害賠償請求権の除斥期間が経過していると主張していたようです。除斥期間とは、民法724条に定められています。不法行為の時から20年を経過した時は、損害賠償請求ができなくなる、という規定です。

先に事案を紹介したとおり、布川事件は1967年に発生した事件ですから、不法行為として指摘されている違法な取調べ行為や違法な証拠開示義務違反行為から数えれば、20年は優に経過しています。そうすると、仮に違法であったとしても、除斥期間が経過していて損害賠償請求は認められない、ということになってしまいます。

この主張に対して裁判所は、再審で無罪が確定するまでは、除斥期間は進行しない、と判断しました。①再審で無罪になる前に除斥期間が進行するならば、冤罪被害者にあまりにも酷であること、②国や公共団体はこのようなケースの場合、再審無罪が確定した後に国家賠償請求されることも予期すべきであること、が理由として挙げられていました。今回国家賠償請求がこの時期になったのは、無実の罪で20年も刑務所に収容されていたことが大きな原因です。それなのに、20年経ったから損害賠償請求ができない、とされるのでは、あまりに不当です。この点は当然の判断だと思いますが、あまりない論点なので、裁判所の判断は評価できます。


布川事件は、ふだん刑事弁護に携わる私の目から見ても、あまりにひどい冤罪事件です。今回の判決で、警察、検察の違法性が認められ、国家賠償請求が認容されたことは、高く評価できます。被告らは控訴せず、確定することを期待します。

以上

非免責債権となった生活保護法63条返還債権の範囲について

世間一般ではあまり話題になっていませんでしたが、平成30年10月1日施行された改正生活保護法により、生活保護法63条に基づく保護費の返還債権(以下ここでは「63条債権」といいます。)が破産をしても免責の対象とならない非免責債権となりました。以前は不正受給の場合の返還債権(法78条)についてのみ非免責債権とされていた(同条4項)のですが、対象が広がった形です。改正の前後を通じて破産申立事件を受任していた依頼者の方に、債務の中にこの63条債権が含まれる方がいたために気になって調べましたので、備忘も兼ねてコラムにしました。なお、この改正についてはこれ以外にも様々な批判があり、日本弁護士連合会や各単位会から反対意見が出ていたところでしたので、詳しく知りたい方はそちら(例えば日弁連のもの:https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2018/opinion_180502.pdf)をご覧いただければと思います。

 63条債権が非免責債権となったのは、生活保護法77条の2第2項がこれを「国税徴収の例により徴収することができる」と規定したためです(破産法253条1項1号)。そして、これについては経過措置が定められており、附則4条において「生活保護法第77条の2の規定は、この法律の施行の日以後に都道府県又は市町村の長が支弁した保護に要する費用に係る徴収金の徴収について適用する」とされています。当たり前と言えば当たり前ですが、要するに、非免責債権となるのは改正法施行後に支給された保護費についての63条債権だけだということですね。私はこの部分が気になって条文を調べました。

 ちなみに、生活保護法77条の2には例外として「(徴収することが適当でないときとして厚生労働省令で定めるときを除く)」という括弧書きが置かれており、形式的には63条債権に該当するとしてもこの場合には強制徴収ができないものとされています。この「厚生労働省令で定めるとき」について具体的には同法施行規則22条の3に定められており、保護費が「保護の実施機関の責めに帰すべき事由によつて」支給されて63条債権が生じた場合であるとされています。

 今後は、依頼者の方への説明はもちろん、例えば過払い金がそれなりに回収できた場合において63条債権が発生しているのであれば破産申立前にその弁済に充てるといったように、対応も変えていかなければならないことがわかりました。

弁護士 船戸暖

労働トラブル回避法を知る無料セミナー 「経営者のための法律セミナー“雇用問題編”」

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科捜研における鑑定の現状

文責:贄田健二郎

1 先月20日、乳腺手術直後に手術を執刀した外科医が患者にわいせつ行為を行ったとされて起訴された事案で、東京地裁で無罪判決が言い渡されたという報道に接しました。この事件については、麻酔覚醒時の術後せん妄による幻覚の可能性が主張されるなどして、そちらも大きな争点になっていました。そしてもう1つ、警視庁の科学捜査研究所(科捜研)が実施したDNA型鑑定の信用性が主たる争点となっていました。

  私も、平成29年に、科捜研の鑑定の信用性が争点となった事案で無罪判決を獲得しており、今回の事件と同様の問題があったので、その点についてコメントしたいと思います。

2 先月20日の無罪判決によると、本件のDNA型鑑定には、科捜研の研究員が鑑定の最中に記入するワークシートに、鉛筆で書き込みを行い、内容を修正する時は消しゴムで消して書き直していたこと、鑑定の推移に従ってワークシートを記載していないことがあったのではないかと疑われること、DNAの抽出液の残余を廃棄したこと、などの問題があり、検査者としての誠実さに疑念がある、とまで言及されたそうです。抽出液の残余を廃棄したそうですから、あとから再鑑定をすることもできません。鑑定が正しいかどうか検証するには、どのような手法で鑑定が行われ、その過程でどのような結果が出たのか、逐一検証していくしかありません。そのための資料としては、鑑定の様子をビデオ撮影でもしない限り、ワークシートくらいしかありません。それならば、ワークシートには改ざんできないように消せない筆記用具で記載すべきでしょう。なのに、ワークシートには鉛筆で記載し、あとから消しゴムで消して書き直した様子があったようです。科学者としてあるまじき態度でしょう。

  私が担当した事例でも、同様の問題がありました。平成29年10月31日に東京地裁立川支部で無罪となった覚せい剤取締法違反被告事件です。この事件では、DNA型鑑定ではなく、覚せい剤使用を立証するための尿鑑定の信用性が争われました。被告人は、すり替えや取り違えの可能性を主張したところ、この事件では、採尿手続時に容器に入れられた液体の量と、鑑定時の液体の量に、無視できない分量の差がありました。検察官は、科捜研に持ち込まれるまでの間にこぼれたのだと主張し、科捜研の研究員が作成したメモには「こぼれている」との記載がありました。ところが、このメモも鉛筆で書かれており、一度消して書き直した跡がありました。他にもいくつかこのメモには問題がありましたが、書き直した跡があったこともこのメモあるいはそれに基づく研究員の証言の信用性を否定する要素となりました。

3 先月27日、日弁連で開催された「本邦におけるDNA型鑑定の原理と科学的問題について」という研修に参加しました。講演した法医学者の先生が、先月20日の無罪判決にも触れて、ワークシートの問題にも言及していました。その中で、「科学実験において実験ノートの鉛筆書きはタブー」と指摘されていました。「東京大学大学院医学系研究科・研究ガイドライン(実験系)」(https://www.m.u-tokyo.ac.jp/education/guideline.pdf)にも、「実験ノートの作成上の注意」として、「記載はペンやボールペンなど消せないものを使用する(鉛筆は不可)」とはっきり書いてあります。講演した先生も、学生にまず最初に教えることだ、とおっしゃっていました。本件の科捜研の研究員は、学生が守っていることすら守っていない、ということです。

  科学の本質は、再現性があることです。後の検証に耐えうるものでなければなりません。鑑定の経過を記載するワークシートは、どのような鑑定が行われたか、あとから検証するために保存すべき資料です。そのワークシートが、鉛筆で書かれ、あとから書き直すこともできる状態であるなら、鑑定の検証などできません。今回問題となった科捜研研究員が行ったことは、もはや科学的鑑定ではない、といってもいいでしょう。

  これが、科捜研の鑑定の現状です。二度とえん罪が発生しないよう、科捜研の改革は急務であるといえます。

以上

依存症回復支援施設アルバ

先日、「アルバ」という依存症回復支援施設の見学に行ってきました。株式会社ヒューマンアルバ(http://human-alba.com/)が運営している施設です。NPOなどではなく株式会社という形態をとっているのが特徴的ですね。

 依存症と一口にいってもアルコールや覚せい剤依存というような物質系の依存、ギャンブルや買い物依存といった非物質系の依存などと色々ありますが、アルバでは基本的には種類に関係なく広く依存症について扱っています。ただし、31年1月現在では諸事情により、依存の対象自体が犯罪行為となる場合(典型的には覚せい剤使用)については受け入れをしていないとのことでした。

 提供サービスについて詳しくはHPなどをご覧いただければと思いますが、依存症回復のための専門的プログラムはもちろん、住居支援や社会復帰のための教育・就労支援も行っていました。一つ大きな特徴であると感じたのは、住居支援です。依存症回復施設で多いパターンは寮を提供するというものですが、アルバでは住居を借りる際の連帯保証人になる、アルバが住居を借り上げるなどの方法により、施設の近くに単身生活できる場所を確保するそうです。集団生活に強いストレスを感じる方もいらっしゃるので、単身生活を前提とした選択があるのは大きいです。

 刑事、民事、家事といった事件の種類に関係なく依存症に悩む方にお会いする機会は多いので、選択肢の一つとして是非お勧めしたいと思いました。

弁護士 船戸 暖

年末年始営業のお知らせ

2018年の営業は12月27日(木)をもちまして終了いたしました。
2019年は1月7日(月)より営業を開始いたします。

弁護人が取調べに立ち会う権利について

先日、「EU諸国における取調べの可視化と弁護人の立会い」というセミナーに参加してきました。

取調べへの弁護人の立ち合いについては、最近、日産のカルロス・ゴーン氏が逮捕された事件に関連して、フランスの新聞社などが日本でこれが認められていないことを批判する報道をしたことから話題になっていました。

 

日本では、逮捕・勾留されている場合はもちろん、そうではない、いわゆる在宅事件の場合でも弁護人が取調べに立ち会うことはできません。これは法律で禁止されているということではなく、警察・検察が絶対に応じないということです。

 

これに対し、EU加盟国では、国ごとに具体的な仕組みは異なっていますが、EU指令により弁護人の取調べ立会いに関する法律が整備されています。もう少し詳しく説明すると、EU指令が直接定めているのは弁護人の援助を受ける権利を保障する法整備なのですが、先行する欧州人権裁判所の判例により、弁護士の援助を受ける権利には弁護人が取調べに立ち会う権利が含まれると解釈されており、その結果としてEU各国で弁護人が取調べに立ち会う権利が認められるようになったということです。なお、同様の権利はアメリカや、お隣韓国、台湾でも認められています。

 

日本でも憲法上の権利として弁護人の援助を受ける権利や黙秘権を保障していますが、これまで判例上弁護人が取調べに立ち会う権利が認められたことはありません。弁護士会としても日本政府に繰り返し立法を求めていますが、今のところ実現するに至っていません。

今の日本の刑事司法の仕組みでは、被疑者を逮捕から20日間以上も拘束することができ、その間ずっと取調べを行うことができます。被疑者には黙秘権が認められていますが、取調べを受けること自体を拒否することはできず、取調べには一人で臨まなければなりません。これで黙秘権を含む被疑者の権利が十分に保障されていると言えるのでしょうか。

 

ゴーン氏の事件はこのような日本の現状が世界の批判にさらされたという意味で良い機会であったと思います。しかし、現在のところ立法により被疑者に弁護人の取調立会権が実現する見込みはないと言わざるを得ません。EUにおいてもそうだったように、こういうときこそ少数者の権利を守る裁判所の出番だと思います。裁判所が一言、憲法上被疑者には弁護人を取調べに立ち会わせる権利が認められる、と判断してくれれば良いのです。これまでの最高裁判所を見るにあまり期待はできませんが、刑事弁護に携わる弁護士として、今後も取調べに対する弁護人立会権実現に向けた活動を続けていきたいと思います。

 

弁護士 船戸 暖

ゴーン氏の収容先について

ゴーン氏が逮捕・勾留されていることは大きなニュースになっています。

ここでは、逮捕された彼が東京拘置所に収容されていることについて、少しだけ触れたいと思います。

 

現在の日本では、一般的に逮捕された場合は警察署に収容されています。そのような扱いから考えると、例外的な扱いをしているように思われるかもしれません。

でも、外国に目を向けた場合、むしろこの日本の扱いこそ、例外的です。

 

「代用監獄」という言葉があります。

 

逮捕・勾留されている間、捜査官による取り調べが実施されます。警察に収容するということは、取り調べをする側の手元に収容するということを意味します。

いわば「取り調べ放題」ということになってしまいます。

 

これはいかにもおかしいのではないか。

さらに言えば、逮捕・勾留という制度自体、取り調べのための制度ではありません。

それなのに警察署に収容するということはおかしなことであると言わなければなりません。

 

興味を持たれた方は、東京弁護士会のホームページにわかりやすいまとめがありますので、そちらもご覧ください。

代用監獄Q&A

https://www.toben.or.jp/know/iinkai/keiji/qa/

 

弁護士 髙橋 俊彦

吉澤ひとみさんの執行猶予判決について思うこと

先日、元モーニング娘。の吉澤ひとみさんに対する事件の判決が下されました。

懲役2年、執行猶予5年ということです。

この事件の弁護人は私や当事務所の弁護士が担当していません。ですからあくまでも外野として思うところを書きます。

 

ニュースについているコメント欄を読みますと、「軽すぎるのでは?」という声が多いようです。

法律家としては、そういう声に対して真摯に受け止める必要があると思う一方で、「果たしてそうかな?」ということも思ったりします。

 

懲役2年というのは、刑務所に入って懲役刑を2年間務めなければならないという刑罰です。それの執行を猶予するという判決です。つまり執行猶予というのは、定められた期間内に(今回では5年)、また犯罪を犯すようなことがなければ刑務所にいかなくて済むけれども、また犯してしまった場合には、執行猶予は取り消される場合があり、そのときには取り消しの原因となった犯罪について言い渡される刑に加えて、今回の執行猶予分(つまり懲役2年)についても服役をしなければならなくなるという制度です。

執行猶予というのは、何年間猶予するのか、という猶予期間を定めなければなりません。裏を返せば、「また犯罪を犯したら取り消されるかも?」という思いを抱きながら生活しなければならない期間、ということになります。その意味では、猶予期間が長ければ長いほど、重い判決であるという見方になります。

そして法律では最長期間として5年とされています。

つまり、吉澤さんに対する判決は、執行猶予にされる場合にはもっとも重い部類であると、裁判所が考えたということになります。

 

刑罰はどのように考えて決めるのか、というテーマであらためてコラムを書きたいと思っていますので、詳しくはそこに譲りますが、執行猶予にするかどうか、をどう考えるかについて少し書いてみます。

 

刑罰はそもそも「報い」としての側面(応報)と、二度と犯さないための更生(教育)という側面があると言われています。

ですから、執行猶予にするかどうかについても、この両面から考えていくことになります。

 

まさに不幸中の幸いですが、吉澤さんの事件では被害者の方の傷害は重篤なものではなかったようです。亡くなってしまっていた場合に比べて、その報いは重く評価されるべきではないでしょう。

ですから、刑務所に送るほどの報いを与えるまでは必要がないのではないか?という考えが働きます。

 

でも、どうやら飲酒運転をしていたようです。そうであれば、過失による事故であったとしても、その過失は重たいものであると評価されるでしょう。この点は、報いとして重いものを与えるべきではないかという方向で考えられるでしょう。芸能界を引退したということは、社会的に大きな報いを受けたということがいえると考えます。そうであれば、さらに刑罰によって与えるべき報いも多少軽くしてもよい、そう考えることもあるでしょう。

 

では、教育という面ではどうでしょうか。本人がこの事件についてどう思っているのか、ということが重要です。教育を受ける側のレベルがどの程度かによって、教育の内容も変わってくることは普通の教育と変わりがありません。

 

また、周りの環境はどうでしょうか。所属していた芸能事務所の社長が嘆願書のようなものを提出したという報道がありました。そういう再出発に向けた支えがあるかどうか、それも重要なポイントです。

 

 

冒頭にお断りしたとおり、私や当事務所の弁護士は弁護人ではありません。したがって事件の詳しい情報はありません。ただ、報道されている限り、弁護人としては、そのようなことをきちんと法廷に出して裁判所の評価を受けたのではないでしょうか。

 

刑事事件の弁護人の業務は、決して法廷の中だけに限るものではありません。

依頼者である被告人が、どうしたら再出発ができるだろうか、二度と罪を犯さないためにどうしたらよいのだろうか、ということを考え、かつ道筋をつけていくことも重要な仕事です。

もちろん、この観点は「実際に罪を犯してしまった場合」についてであることは当然です。罪を犯していないにも関わらず、被告人とされてしまった場合(えん罪事件)とは違います。

 

我々、立川フォートレス法律事務所の弁護士は皆、このような刑事事件に情熱を傾けてきましたし、今後もそのつもりです。

 

どうぞお気軽にご相談いただければと思います。

 

弁護士 髙橋 俊彦

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